恋のかけひき
肉体的暴力をパートナーに振るうのは圧倒的に男だ。そして、男が暴力を振るうかどうかと、彼がどんなパートナーつなぎとめ戦術を使う傾向にあるかとの問には関連がある。
ある研究では、計1、235人の男女に次のことをたすね、男のパートナーつなぎとめ戦術と肉体的暴力との関係を調べた。回答者が男性の場合は、自分の行動についての自己申告だ。
(1)過去1ヵ月間にパートナーの男性がどんなパートナーつなぎとめ戦術をしたか?
(2)同じ期間内に、パートナー男性がどんな暴力行為(たとえば、顔を蹴る)をどのくらいの頻度で行い、その結果どんな怪我をしたか?
男女のどちらが回答したかで多少の差は見られたが、暴力の行使との強い関係が見られたのは、パートナーの監視(行き先・持ち物チェック)、パートナー隠し(ほかの男性からの隔離)、パートナーの時間の独占、パートナーの感情の操作・誘導(泣き落とい、パートナーの浮気の非難などだ。
つまり、なにかというと浮気を疑い、パートナーが同性の友人と会うためにでかけることさえ嫌い、できるだけ家に閉じ込め、冷たくされると今度は泣き落としにかかる、こういう男はそうでない男より肉体的暴力を振るう可能性が高い、ということだ。
交際の初めは、誰だってパートナーに暴力を振るったりはしない。女性諸君、もし、あなたがこのような男性とつき合っているなら、かなり注意が必要だ。そして、男性諸君。もし、あなたがパートナーに暴力を振るうことがあり、それを自分で制御できな。いのなら、カウンセリングを受けてほしい。どんなに彼女を愛していても、暴力で彼女をつなぎとめることはできない。暴力は、彼女が去る可能性を高くするだけだ。
パートナーをライバルに奪われないために、私たちは実にさまざまなことをする。デヴィッド・バスの研究グループは、これらを5つの大きなグループに属する19の戦術にまとめている。3グループはパートナーに向けた戦術、2グループはライバルに向けた戦術だ。
まずはパートナーに向けた戦術。 Iのパートナーの直接防護は、とにかくパートナーを自分以外の異性に近づけまいとする戦術だ。パートナーが行くといったところに不意に立ち寄ったり、パートナーの持ち物をのぞき見したりといった行動の監視。ほかの男(女)のいるパーティにはパートナーを連れて行かないといったパートナー隠し。余暇は自分とだけ過ごすようにパートナーにせがんだり、自分の空き時間はできるだけパートナーのそばにいたりといったパートナーの時間の独占。この3つだ。
このサイトでも論文をいくつも引用しているアメリカの心理学者デヴィッド・M・バスの著書『The Dangerous Passion』(直訳すれば、危険な熱情)の翻訳本のタイトルは、『一度なら許してしまう女 一度でも許せない男』となっている。本が売れるようにと人をひきつけるタイトルをつけたのだろうが、それにしてもこのタイトルは言い得て妙。男と女の性的嫉妬の違いを、実に端的に言い表している。実際、パートナーに裏切られたとき、男と女では、苦痛と感じること、耐え難いと感じることが違うのである。
たとえば、ある研究では、アメリカの大学生234人(男女各117人)に次のような質問をした。
あなたのパートナーがほかの誰かに恋愛感情(精神的つながりをもち、セックス(肉体的つながり)をしたと想像してください。その人とパートナーとの問の精神的つながりと肉体的つながり、あなたにとって、よりがまんできないと感じるのはどちらですか?
この質問に対して「肉体的つながり」と答えた学生の割合はい男子では61%に達しているのに、女子では13%、女子では大多数の87%が「精神的つながり」と答えている。つまり、男子は肉体的裏切りを、女は精神的裏切りを、よりがまんできないものと感じているわけだ。
この研究では、ほかにもさまざまな二者択一問題をだして、肉体的裏切りと精神的裏切りのどちらがよりがまんできないかをたずねている。質問の仕方を変えても、男女の違いは変わらない。また、質問中の「よりがまんできない」という言葉を「より許せない」に変えても、「より別れる可能性が高い」に変えても、男女の違いはそのままだ。男子にとっては肉体的裏切りが、女子にとっては精神的裏切りがより耐え難い。
たった1回の情事。許してしまうのが女、許せないのが男、である。
